
冬になると、子どもの手足が氷のように冷たく感じられる日が増えてきます。
朝の着替えのときに「冷たいな」と驚いたり、夜寝る前になかなか足が温まらず「寒くないかな?」と気になったり……。
「もっと厚着をさせたほうがいいの?」
「温かいものを食べさせたほうがいいのかな」
「体を冷やさないように工夫しなきゃ」
そんなふうに、食事や生活を見直そうとするママはとても多いと思います。
「こども薬膳」の視点では、この冷えを「今すぐ消さなきゃいけない異常事態」とは考えません。 むしろ、冬という厳しい季節の中で、お子さんの体が環境に適応しようとしている「ごく自然な反応」のひとつとして捉えます。
この記事では、3〜5歳のこどもを育てる家庭に向けて、
冬に体が冷えやすいと感じたときに、こども薬膳の視点で 食事や暮らしをどう考えるか を整理していきますよ。
冬にこどもの体が冷えやすくなるのは自然なこと
冬は気温が下がり、空気も乾燥しやすくなります。大人でも体が冷えやすい季節ですが、こどもはその影響をさらに受けやすい存在です。
とくに3〜5歳は、体温を一定に保つ力がまだ育っている途中のため、外気の変化に体が反応しやすくなっています。
こどもの手足が冷たく感じられるのは、体が寒さを感知しているサインです。
これは異常なことではなく、冬という環境の中で見られる一つの反応。
つまり、手足が冷たいのは、体が「今は大切なところを優先して守ろう」と機能している証拠。
これは子ども特有の未熟さゆえの反応であり、異常なことではありません。「今は冬だから、体が季節に正しく反応しているんだな」と、まずはゆったりとした気持ちで受け止めてあげてください。
こども薬膳で大切にする「腎(じん)」という場所

薬膳のベースにある考え方では、冬は体のなかでも「腎(じん)」という場所を大切にする季節だと言われています。
この「腎」は、単なる臓器の名前ではなく、子どもが健やかに育つための「生命エネルギーの貯蔵庫」のようなイメージです。
子どもはみんな「腎」が未完成
子どもは、この「腎」に蓄えられたエネルギーを使って、背を伸ばし、骨を強くし、知能を発達させていきます。
しかし、冬の寒さは、この大切な「腎」のエネルギーをたくさん消耗させてしまいます。 「腎」のパワーが外からの寒さを防ぐことに手一杯になると、体を温めて巡らせる余力が少なくなり、結果として手足の冷えとして現れやすくなるのです。
冬の食事や暮らしの目的は、この「腎(エネルギーの貯蔵庫)」を無理に使い切らないように、外から守り、内から補ってあげることにあります。
手足の冷たさから見えてくる、冬の過ごし方
手足が冷たい場面を思い出してみると、時間帯や状況に偏りがあることに気づきませんか?
たとえば…
- 朝起きたとき
- 外から帰ってきた直後
- 動きが少なくなった夜
こうしたタイミングで冷えを感じるのは、活動量が少ない時間帯で体の巡りがゆっくりになるためです。
また、冬は外遊びの時間が減り、室内で過ごすことが多くなります。
暖房で暖かい部屋と寒い外との行き来も、こどもの体には負担となりやすいのです。
手足の冷たさは、生活全体の流れの中で起きている反応として見ることが大切です。
一つの要素だけに原因を求めず、暮らし全体と体のバランスを重ねて考える視点が基本になります。
「温めればいい」とは限らない? 3つのチェックポイント

冷えに気づくと「温かいものを食べさせなきゃ」と考えがちですが、実は「温めること」が逆効果になる場面もあります。お子さんの様子が以下のどれに近いか、少し立ち止まって観察してみましょう。
① エネルギーの「燃料」が足りないタイプ
もともと食が細かったり、疲れやすかったりする子に多いタイプです。 温めるための「燃料」そのものが少ないので、温めるものも大事ですが、燃料をしっかり補給できる「お米(穀物)」などをしっかり食べて、胃腸を元気にすることが近道です。
② 「食べ過ぎ」で熱が塞がっているタイプ
意外かもしれませんが、お腹がいっぱいすぎると、体は消化にすべてのエネルギーを使ってしまい、手足まで熱を運ぶ余裕がなくなります。
冬のイベント続きでご馳走が続いたあとに冷えを感じるなら、あえて「食事の量を少し減らす」ことが、結果として巡りを良くし、冷えの解消につながります。
③ エネルギーが「渋滞」しているタイプ
元気はあるし、熱もない。でも手足が冷たい……。
これは、エネルギーはあるのに、緊張やストレス、あるいは運動不足などで、熱がうまく全身に回っていない状態です。
この場合、ただ温めるよりも、少し体を動かしたり、香りの良いもの(みかんの皮や春菊など)で「巡り」を良くしてあげることが大切です。
日々のごはんで意識したい「冬の整え方」

こども薬膳では、冷えを「取り除くべき異常」とは考えません。
冬は、体が外に向かって動くより、内側で整える時間を持ちやすい季節でもあります。
こどもの体が「今は静かに過ごしたい」とサインを出しているのかもしれません。
その場合、無理に巡りを促すのではなく、体を支える方向の食事や過ごし方を選ぶことが大切です。
季節の性質と体の様子を重ねて考えることが、こども薬膳の基本です。
日々のごはんで意識したい、「冬の整え方」

特別な薬膳食材を探す必要はありません。スーパーにある食材で、十分にお子さんの「腎」を守ることができます。
黒い食材は「腎」の味方
薬膳では、色と体の場所がリンクしていると考えます。「黒いもの」は、冬の担当である「腎」を助けてくれる色です。
- 黒ごま、ひじき、わかめ、黒豆、海苔
これらを少しずつ、毎日の食卓に添えてみてください。おにぎりに黒ごまを振るだけでも、立派な冬の養生ごはんになります。
「煮る」「蒸す」が冬の基本
冬は乾燥も激しいため、体の中から潤いを与えることも大切です。
焼いたり揚げたりする料理よりも、スープ、お味噌汁、蒸し野菜など、水分と一緒にゆっくり火を通した料理を選ぶのもいいでしょう。
水分を含んだ温かさは、胃腸に優しく染み込み、効率よく体を内側から温めてくれます。
引き算の視点:「火を消さない」
温めるものを入れる前に、今ある体の「火」を消さないことも重要です。
- 冷蔵庫から出したばかりの冷たい飲み物
- お砂糖がたっぷりのお菓子(体を冷やす性質があります)
- 真冬の生野菜サラダ
これらは、お子さんの小さな「腎」の火を、一気に消してしまいかねません。
冬の間だけは、これらを少しだけお休みするか、食後に温かいスープを飲むなどのフォローをセットにしましょう。
暮らしの中で「巡り」をサポートする
食事以外でも、冬特有の「冷え」を和らげるコツがあります。
「早寝遅起き」のすすめ
薬膳の世界には「冬は太陽と共に寝起きしなさい」という教えがあります。
冬の朝、暗いうちから無理に起こして活動させるのは、子どものエネルギーを激しく削ります。
冬だけは少しゆっくりめに布団から出て、お家の中で体が温まってから一日をスタートさせる。そんなリズムを許してあげることも、立派な冷え対策です。
「首」がつく場所をガード
「首」「手首」「足首」は、冷たい空気が入り込みやすいポイントです。
特に子どもは夢中で遊んでいると、背中やお腹が出がち。
ここをガードするだけでも、体の中の「腎」のエネルギーが守られ、手足まで熱が回りやすくなります。
おわりに:冬は「土台」を整える時期
こども薬膳では、冷えを「取り除くべき敵」とは考えません。
冬は、植物が土の中でじっと春を待つように、人間も内側の土台を整える時期です。 お子さんの手が冷たいのは、今、外側にエネルギーを出すよりも、体の内側を守ることに力が注がれている、子どもらしい反応です。
「今は季節の影響を受けやすい時期なんだな」
「焦らなくて大丈夫。冬の環境に体が対応しているんだね」
そうやってママが一歩引いて見守ることができれば、日々の育児が少し楽になるきっかけにもなりますよ。 完璧を目指さなくて大丈夫です。
今日のお味噌汁の食材をひとつ変えるだけでも大丈夫。
その一口が、お子さんの「一生モノの体」を支える大切な一歩になります。
さらに学びたいお母さんへ
季節ごとの過ごし方や、症状別のレシピ、胃腸を労わるヒントなど、今日からすぐに実践できる知恵が満載です。お子さんのアレルギーや体調不良に悩むママの強い味方になる一冊ですので、ぜひお手にとってみてくださいね。
